新規要素開発の検討

ここで言う「要素開発」とは、製品の完成体に組み込む前の、個別の技術要素の開発のことを指します。

今からやろうとしている「要素開発」は具体的には、どの物理量をセンシングするか、どのセンサーで行うか、の検討、選択、試作、実証実験、あたりまでを意識しています。

当面の取り組みとして「人の動きを見える化する」ことに決めたので、手始めに人の動きを検知できるセンサーを探してみます。

物理的な力を検知するもの=振動、圧力、等による
電磁波を使うもの=可視光、赤外線、レーザ、等による
その他、超音波など

「人の動きを見える化する」だけでも使えそうなセンサーがたくさんあって選ぶのに苦労していることがお分かりになるでしょう。

事業運営の方向性について

前回まで商品企画についてあれこれ書いてきましたが、事業の方向性についても一言述べておかねばならないことに気づきました。

市場経済に身を置いているので、どの土俵で戦うか、を意識せねばなりません。

あるプロダクトを持っているとして、業績を伸ばすための次の一手は大きく分けて次の2つあります。

1)価格を下げてたくさん売る
2)価値を上げる

お分かりのように1)は大企業のアプローチで、投資競争になってしまいます。翻って私どものような会社は2)を目指すべきなのです。

無線、エナジーハーベストはコスト競争です。有線よりも設置や保守のコストが安くできるから無線にしたい。電池のコストや電池交換のコストよりも安くできるならエナジーハーベストを選ぶ。この行き着く先は価格、投資競争です。私どもはこの競争には加わりません。

というわけで、今後も今までできなかったことをできるようにする、付加価値をつけることにこだわり続けます。

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商品企画あれこれ(4)

会社方針としてどこを向いて仕事をしているのかある程度の方向性を出す必要性があることに気づいたのでここまで小文をいくつか書きました。ここで結論を出しますと、当面の方針としては「人の動きを見える化する」ことに注力したいと考えています。

EnOceanのセンサーは大きく分けると「環境を観測する」ものと「人の動きを把握する」ものの2種類がありますが、前者は既に家電等に内蔵されており、センサー単独で必要になるのはビルオートメーションなど大規模な建物に限られるだろう、との読みです。そういうところは当然従来から市場を抑えている人々がカバーしますから。「モノ」についてはその「モノ」を持っている人々が考えます。

というわけで、「人の動きを見える化」できるセンサーの調査・試作から着手している、というのが現状です。

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商品企画あれこれ(3)

一般論を並べるのはここまでにして、今何を考えているか一端を披露しようと思います。

1)エナジーハーベスト無線、EnOceanの今後

エナジーハーベスト無線で送れる情報量はかなり限られます。「ドアが開いた・閉じた」「人が前を横切った」「温度はXX℃」程度です。ソーラーセルの効率は徐々に上がるにせよすぐ動画を送れるような劇的な変化は見込めません。

EnOceanからLPWA版も出ましたが、全国に設置して誰でも使えるようにするというような動きはありません。point to pointの使い方です。当面はEnOcean発祥のヨーロッパで普及した照明制御含むビルディングオートメーションか、日本から普及し始めたassisted living、日本語では「高齢者見守り」のジャンルが普及していくことでしょう。これらジャンルでのプレーヤーはほぼ出揃って普及活動をしていますので、当社が敢えてこのレッドオーシャンに入っていくことはありません。

とはいえ、EnOceanの公式ディストリビューターなので、部品供給、設計サポート、啓蒙活動等の業務は今まで通り続けます。

2)当社の今後の活動につきまして

特定小電力のエナジーハーベスト無線を続けて見えてきたことがあります。

ひとつにお客様からの無線化への期待、ニーズは根強いということ。そして無線化しても電源ケーブルが残るのは片手落ち、つまり低電力化して電池化、エナジーハーベスト化が避けられない、ということ。

我田引水ではありますが、センサーの無線化、並行して低電力化、の方向性は間違っていなかったということです。

というわけで引き続き、物理世界から取れる情報の種類を増やし、質を上げ、論理の世界に送り込んでいくのが当社の使命と再認識しているところです。

次はもう少し具体的にお話ししましょう。

商品企画あれこれ(2)

前項では主に作る側、事業者側の視点でIoT商品企画の悩みを書きましたが、次に使う側、マーケット側から商品を見て見ます。技術的な視点は外しませんが。

1)センサー自体を移動するか否か

センサーを人が持って移動するか、移動体(車とか)につけるか、というような視点です。「ウェアラブル」とか生体情報の観測とかいうジャンルもあるにはありますが、スマホがこれだけ普及してしまうと人に新たに別のセンサーを持ってもらうのはかなり骨が折れそうです。車載センサーは当然大手が考えているはずなので、ここではひとまず「センサーは移動しない、どこかに据え付けて使うもの」を前提とします。

2)観測対象は環境かモノか人か

この判断が大きく商品を左右すると考えています。「環境」とは温度、湿度、照度、気圧、騒音、ガス、放射能、埃、等々を指します。「モノ」とは、設備の稼働率、劣化度合いを知るために消費電力や振動などを測定することを意味します。建築物や害獣対策もここに入るでしょう。

最後に「人」とは人の行動、つまりどこかを通過した、混雑度合い、行列の長さ、等々を知ることです。

通信事業者にとって上記はどれも共通でしょうけれど、我々のような直にお客様に接している事業者はどういうお客様に使ってもらおうとしているかで商品が大きく変わってくると思います。

商品企画あれこれ

当社は「エナジーハーベストによる無線センサー」をキーワードに事業を進めて参りましたが、今後の方向性を占うために日々、技術やマーケットをリサーチしています。

「センサー」を軸に据える場合、センサーの王様であるイメージセンサーを意識せざるを得ないのですが、無線センサーに使うには消費電力が大きくてまだ実用になりません。携帯やスマホでカメラが使えるのは毎日充電しているからです。

では「無線」を軸にしたらどうでしょう。エナジーハーベストだといかんせん給電能力が低いのですが電池内蔵するとしても10年は持たせたいでしょう。

とすると、今現在入手が容易な電池で10年持つような無線センサーとはどんなものなのか?が検討のとっかかりになります。

「携帯無線端末」はスマートフォンで一応の完成形を見ましたが、「IoT」を企画するには考慮するパラメータが多く、決め手がなかなか見えてきません。

2018

開業以来「EnOcean規格の無線スイッチ・センサー」によるビジネス構築に注力して参りましたが、EnOcean関連プレーヤーの勢力図が固まって来たのと、EnOceanについては啓蒙期から普及期に移行しつつあることから、2017年は次の一手を模索して参りました。

結論として、2018年からは「IoTゲートウェイ」と「IoTセンサー」(EnOceanに限らない)、に技術開発・ビジネスの幅を広げようと考えております。

手始めに3G/LTE, LPWAを利用したセンサー及びゲートウェイの開発から着手しています。

2018年も乞うご期待です。

About TMP006, TMP007

赤外線温度センサーを企画している際に、TI社のTMP006, TMP007が「非推奨品」の表示を見つけて気になったので問い合わせてみました。

「非推奨品」とは”NRND”(Not Recommended for New Design)のことで、製造中止のためこれから新規製品には使おうとするな、ということのようです。

よって赤外線センサーは他社製品を検討することにしました。

PS. ブレークアウト基板とか結構出回っていますが、これで製品企画している人にこういう情報は流さないんですかね。賢い技術者は自衛するしかないんでしょう。

センサー・インタフェース考

2017.12.23 updated

スイッチサイエンス社が同様の趣旨のContaという規格を打ち出しているので追記しておきます。

http://trac.switch-science.com/wiki/Conta_format

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主なセンサーデバイス(半導体やMEMSのチップ)はUART, I2C, SPI等の各種シリアルインタフェースを備えています。センサーデバイスが小さくなって半田付けも難しくなったので「ブレークアウト」と称するセンサーデバイス+アルファしか乗っていない小基板が出回るようになりました。この「ブレークアウト」から電線を引き出すため、普通は「半田付け」をしますが、主にソフトウェア技術者はあまり半田付けなどやりたくないので、半田付けが必要ない、コネクタで接続するブレークアウトが出てきました。代表例を挙げますと(入手性に難のあるマイナーなものも含まれます)

Seeed社のGroveシステム

http://wiki.seeed.cc/Grove_System/

Sparkfun社のQWIIC

https://www.sparkfun.com/qwiic

Digilent社のPmod

http://www.digilentinc.com/Pmods/Digilent-Pmod_%20Interface_Specification.pdf

MikroElektronika社のmikrobus

https://download.mikroe.com/documents/standards/mikrobus/mikrobus-standard-specification-v200.pdf#search=%27mikrobus+spec%27

各社とも規格を公開していますが、主だったセンサーモジュール(ブレークアウト)はその会社が揃えてしまうので、センサーモジュール(ブレークアウト)を供給するサードパーティが育たず、どの規格も各社の囲い込みツールになっています。

もう一つの大きな課題は、電気的・物理的な仕様を合わせたところでその上位のプロトコルが煩雑・種々雑多で共通化が困難なことです。ここが技術者の腕の見せ所でビジネスにもなるところですからしばらくはこのまま統一インタフェースが現れることもなく時が流れて行くのでしょう。

新製品企画の意図など

昨日販売開始した接点送信機とモーションセンサーの商品企画の意図について書き留めておきます。

1.電池式接点入力送信機 ETM506J-2

元々当社にはソーラー発電式の接点送信機STM250JTという製品があったのですが、全く光が取れないところで使いたい、というあるお客様の提案から生まれました。ある機器の稼働状況を知るためにお使いになり10年程度メンテナンスフリーにしたいとのことです。特定小電力無線の接点送信機は各社から出ていますが、接点の変化をほぼリアルタイムに無線出力し、920MHz帯で、電池交換が10年不要、というのは他にないようです。不特定多数のお客様向けに電池容量を大幅に拡大して汎用の商品としました。

2.電池式無線モーションセンサー(標準検出タイプ) ETM509J

EnOcean方式の人感センサー(英語ではOccupancy sensor)は、EnOcean GmbH社から天井取り付けタイプと壁取り付けタイプの2種が発売されています。その他国内メーカからも各種出ていますが、どれも製品仕様は似通っており、ソーラー発電式で「焦電型赤外線センサー」を人の在・不在を検知するために使用しています。「焦電型赤外線センサー」の動作原理は、赤外線の発光体(多くは人体)がそのデバイスの表面を横切ることを検知します。つまり「動いたこと」を検知するので「動かない」と検知しません。単純にこれを人感センサーとして用いると人がいないと誤認することがあるということです。トイレの個室でじっとしていると照明が消えた経験をお持ちの方がいらっしゃるでしょう。つまり在・不在検知のためには無線送信するタイミングのアルゴリズムに調整・カスタマイズが必要なことが多々あるということです。

そこで当社では、「焦電型赤外線センサー」の出力をそのまま、無線出力するようにしました。人を検知するアルゴリズムはゲートウェイ側、お客様が適宜開発・調整できることになります。その反面、無線出力が増えて電力を消費するのでソーラー発電をやめる代わりに大容量のリチウム電池を搭載し交換もできるようにしました。

製品名も「人感センサー」「Occupancy sensor」ではなく、「モーションセンサー」としました。

2017.12.6