EnOcean

いわゆる環境発電による無線機器を製品化するには、実績の豊富なEnOcean製品・プロトコルを使うのが近道です。
ここではEnOceanで製品開発をするための基礎知識を記します。

1) まず手始めに開発キットを入手して、製品として成り立つ性能があるのか、また製品化までに、他に知識や機材等何が必要かを確認するのが普通です。
https://www.switch-science.com/catalog/list/552/

2) 以降、通常の無線・電子機器の製品開発と同等のプロセスを踏みます。

3) 無線の認証ですが、EnOceanの日本向け928MHz製品は、無線モジュールのレベルで「工事設計認証」が取れていますので、アンテナを変えるなど特殊なことをしなければそのまま発売することは可能です。

4) 通信プロトコルについて。一般公開されているものだけを使って製品化は可能です。ただしEnOceanアライアンスメンバーにだけ公開されている情報を知りたい場合、またメンバーと協業して事業をしたい場合など、アライアンスメンバーになっておくのは意味があります。また、メンバーになっておけば、EnOceanプロトコルの認証を始める動き等も事前に知ることができます。

アライアンスメンバーのランクには、プロモーター、パーティシパント、アソシエイト、の3ランクあり、アジア圏のプロモーターはロームです(他の会社はなれないでしょう)。日本国内の活動ですが、アライアンス支部会が年2回開かれ、アライアンスのチェアマンや海外メーカなど多数来日する際にいろんな話が聞け、適宜見学会などのイベントが催されます。

 

EnOcean無線規格・プロトコルの解説


ここではEnOcean無線規格およびプロトコルの概要を説明します。

1) ISO/IEC 14543-3-10

EnOceanが準拠している国際規格です。この通信の標準規格は、 OSI(開放型システム間相互接続)の物理層、データリンクおよびネットワーク層であるレイヤ1から3までをカバーしています。この標準規格の正式なタイトルは次のとおりです。 ISO / IEC14543-3-10 情報技術 — ホーム電子システム(HES) — パート3-10:エネルギーハーベスティングに最適化されたワイヤレスショートパケット(WSP)プロトコル — アーキテクチャと下位層プロトコル

2) ARIB STD-T108
日本国内でEnOceanが準拠している無線規格です。

3) 上位プロトコル

まずは略語の説明から(リンク先から最新版ドキュメントがダウンロードできます)
a) ERP:EnOcean RadioProtocol:最新版はERP2:EnOcean GmbHが決めたものです。
b) ESP:EnOcean SerialProtocol:最新版はESP3:これもEnOcean GmbHが決めたものです。
c) EEP:EnOcean EquipmentProfiles:最新版はEEP2.6:これは上記2つと異なり、EnOcean Allianceが決めたものです。

ごく大雑把に言うと、
a) ERPは無線プロトコル(つまりメーカであるEnOcean GmbHが責任を持つところ)
b) ESPはEnOcean無線モジュールとのI/Fであるシリアルプロトコル(同上)
c) EEPはアプリケーション層で各社の互換を取るための規約事項(これはEnOcean Allianceのメンバー各社が話し合って決めるものです)

となります。

4) 電文解析の例

a) ロッカースイッチ(シングル)を押してみる。この時、受信側のUSB400J/TCM410J/STM400J-snifferのUART出力は以下のようになります。ESP3のP.12参照。

Group Field Value hex
Sync.Byte 55
Header Data Length 00 07
Optional Length 02
Packet Type 0A
CRC8H 0A
Data 20
00
29
91
F1
88
00
Optional Length 02
2A
CRC8D FC


Data Lengh=7なので20,,,90まで7byte、Optional Length=2なので02,2Aで2byte、Packet Typeが0A、とわかります。

Dataの中身はERP2のP.16を参照すると、1byte目=20なので、
Originator-ID 32bit, no Destination-ID
R-ORG=RPS telegram
Originator-ID=002991F1
Data=88
Status=00
ということがわかります。




b) 温度センサーの場合。受信側のUSB400J/TCM410J/STM400J-snifferのUART出力は以下のようになります。ESP3のP.12参照。

Group Field Value hex
Sync.Byte 55
Header Data Length 00 0A
Optional Length 02
Packet Type 0A
CRC8H 9B
Data 22
04
00
1D
6E
00
00
4B
08
E5
Optional Length 03
31
CRC8D A8


Data Lengh=Aなので22,,,E5まで10byte、Optional Length=2なので03,31で2byte、Packet Typeが0A、とわかります。

Dataの中身はERP2のP.16を参照すると、1byte目=22なので、
Originator-ID 32bit, no Destination-ID
R-ORG=4BS telegram
Originator-ID=04001D6E
Data=00004B08
ということがわかります。

次にData=00004B08を解析するにはEEP2.6のP.26を見ると1オリジンで3byte目が温度表現であることがわかります。
range 255…0でscale0…+40度を表現しているので、
0x4B=75dは(255-75)/255*40=28.23度

とデコードできます。

 

 

FAQ:Frequent Asked Questions よく聞かれること


本サイトにはいろんな方が訪問されるのでまずは超初心者と自称される方、もしくは今の時点では門外漢と思っている方向けに、よくある質問を列挙しておきます。正確さや詳細さにはこだわらず、まずはさっと流し読みしてもわかることを目指しました。
updated 2015.5.17

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Q. 「エンオーシャン(EnOcean)」って何?
A. ドイツの会社の名前です。押した力や太陽電池など電池が要らない無線モジュールや、その関連機器、ソフトウェアなどを製造販売する会社です。

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Q. どのくらいの距離飛びますか?
A. 屋内で50m、屋外で300m、という言い方をしています。いずれも周辺環境(部屋の形、壁等障害物のあるなし・材質、等々)に左右されるので導入前にテストされることをお薦めします。

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Q. 他の無線機器とつながりますか?
A. 「エンオーシャン(EnOcean)」という規格を使っている機器同士はつながります。他の方式の無線機器とは直接は繋がりません。例えば、スマホやPCが使っているWi-FiやBluetoothを利用している機器とつなぐにはいわゆる「ゲートウェイ」という装置が必要になります。

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Q. 他の無線との違い、特徴は何ですか?
A. 電池が不要で発信できることが最大の特徴です。その他に、920MHz帯を使っているので2.4GHzのようには混雑しておらず、障害物を回り込むことができるので到達性が高い、という特徴があります。

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Q. 他の無線規格で電池不要のものはありますか?
A. 大きな発電力を持つ装置をつければいいので原理的にはどの無線でも電池不要にはできるはずですが、コスト的、アプリケーション的に意味のある製品を実現できているのはエンオーシャン以外に知りません。次に電池不要無線の実用化が近いのはBluetooth-LEと考えられ、注目しています。

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Q. 押した力や太陽電池以外に、電池不要の電源はありますか?
A. 温度差を利用するものや振動を利用するものが研究開発途上です。現時点で実用的な製品としては押した力と太陽電池によるものが多いです。

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Q. 実物を見るにはどうしたらいいですか?どこで買えますか?
A. こちらまでご相談ください。