ネットワーク機器
ネットワークを理解する前に現実にはネットワーク機器が身近にどんどん入り込んで来ています。現実を無視して抽象的な概念だけを理解するのは無駄だし退屈でしょう。かと言って現実の機器の説明だけを聞いても基礎が分かってないと表面的な理解だけで終わってしまい応用が効きません。
ここでは、これら実際のネットワーク機器がどんな役割をしているのか見て触って試して理解するのと、次項の「OSI参照モデル」に示した理論的な概念を獲得するのを、行ったり来たりするのがネットワークを分かる早道だと思います。
目次
1.当社オフィスのネットワーク機器
2.OSI参照モデルとネットワーク機器の関係
3.Wi-Fi機器を克服しよう
4.(続く)
1.当社オフィスのネットワーク機器
まず、当社塩尻オフィスで使っているネットワーク機器を紹介しましょう。
1) ONU
NTT東日本から借用しているOptical Network Unit:光回線終端装置です。ここに有線LANポートが出ており、Wi-Fiのアクセスポイントにもなるので、小規模な事務所のネットワークはこれだけで事足ります。
2) Wi-Fiアクセスポイント
Wi-Fiを使いたい場合、ONUに既に内蔵もしくはオプションで機能追加できるのですが、手元でいろいろ操作したいので既に自宅で使っていたアクセスポイントを使っています。
3) ハブ
ネットワークにぶら下がる機器が多く1)2)だけではポートが足りないため、ハブを別に使っています。
あとは複合機、PC、当社開発中の製品群、等々です。
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1)のONUは光回線と事務所内のLANに接続するための装置ですので非常にわかりやすいのですが、そこに性格の違う機器をたくさんつなぐと途端にわかりにくくなります。
一番わかりにくいのが2) Wi-Fiアクセスポイントです。いきなりこの複雑怪奇な製品の説明をすると本質を見失うので、遠回りですが、OSI参照モデルと一般的なネットワーク機器との関係から説明していきます。
2.OSI参照モデルとネットワーク機器の関係
OSI参照モデルは次の項で説明しているので、行ったり来たりしながら読んでみてください。そういうことができるのが書籍よりもWebのいいところです。
1) リピーター、ハブ
OSI参照モデルの物理層で動く機器です。延長ケーブルのようなものと思ってください。
2) ブリッジ、スイッチ(スイッチングハブ)
OSI参照モデルのデータリンク層で動く機器です。物理アドレス(MACアドレス)を解釈して、正しい物理アドレスにデータを届けようとします。
3) ルータ
OSI参照モデルのネットワーク層で動く機器です。論理アドレス(IPアドレス)を解釈して、正しい論理アドレスにデータを届けようとします。
当社オフィスの例では、ONUが3)ルータ、Wi-Fiアクセスポイントが2)ブリッジか3)ルータ(切替可)、ハブが1)ハブ、に当たります。
Wi-Fiアクセスポイントはスライドスイッチでブリッジがルータを切替可能になっていますがわかりにくいですね。次にこれを説明します。
3.Wi-Fi機器を克服しよう
Wi-Fi機器のわかりにくさは
1) ブリッジ(AP)とルータを切り替えられる>逆に言えばどっちにしたらいいのかわからない
2) DHCPとかサブネット(マスク)とか自分のPCの設定をどうしたらいいのかわからない
3) 暗号やパスワードが必要
というところでしょう。
2)3)は追々解説していくとして、まず1)。
簡単に言えば、OSI参照モデルのデータリンク層で動かすときブリッジ(AP)、ネットワーク層で動かすときルータ、にします。
データリンク層で動かす、とは無線LAN側を有線LAN側のサブネットに入れるということ。
ネットワーク層で動かす、とは無線LAN側のサブネットを有線LAN側のサブネットと分ける、ということ。
以下、参考。
当社保有のWi-Fiアクセスポイントの1個。APとRouterという表記が見えます。
もう一個はルータとブリッジという表記になっています。
AP(アクセスポイント)=ブリッジ、つまりデータリンク層で動くモードです。有線LANと無線LANは1つのネットワークとみなし、ネットワーク層には関与しません。このWi-Fiアクセスポイント自身もIPアドレスを持たず、つながる機器のIPアドレスはスルーし、IPアドレスには関知しないと言うことです。
ルータは上記で説明したようにネットワーク層で動くモードであり、このWi-Fiアクセスポイント自身もIPアドレスを持って、有線LANと無線LANは別のネットワークとしてこれらネットワークをつなぐ「ルータ」として働きます。
自分の環境ではどっちにしたらいいか、ですが、私と同じような環境、つまりONUが1個でその下に数台ネットワーク機器がある程度の規模であればAP(ブリッジ)モードでいいと思います(ONUがルータ機能を持っている)。
Wi-Fiアクセスポイント機器でネットワークを積極的に分割したい何らかの理由があるときルータモードにすることを考えればいいでしょう。APモードが前提であれば、Wi-Fiアクセスポイントを導入する前とはデータリンク層が無線になるだけで他のネットワーク設定(DHCP等)は変わらないはずです。
「OSI参照モデル」がわかるとネットワークが見える
ネットワーク、プロトコルの勉強をすると、書籍の最初の方に「OSI参照モデル」について解説してあります。
基礎知識がないときに高度に抽象的な概念を獲得するのは苦労します。
ここでは「OSI参照モデル」を初学者が直感的に理解できるような解説を試みました。
技術的に不正確な表現が多用されていますが、「初学者が直感的に理解できる」ことを第一義として書いたので上級者の方は目をつぶってください。
まず、お互いに正しく通信するにはプロトコルの各階層で約束事を守る必要があるということは理解できているものとして話を進めます。例えて言うなら、手紙なのか電話なのか電子メールなのか。日本語なのか英語なのか。夕飯の相談をしているのか新聞記事について話をするのか。等々です。
正しく通信するためにはどうすべきか?を順を追って説明する関係上、一番下の物理層から説明します。
1.物理層
目で見てさわれる一番直感的にわかりやすい階層です。有線と無線では直接つながらない。USBコネクタと電話線コネクタはつながらない。ここを合わせろ、ということです。
2.データリンク層
ここから上が論理層、つまり0か1かの世界です。しかもメディアは1つ、つまり電線は一本、無線の周波数は1個、の中の通信です。この中で正しく通信するには物理的に固定的なアドレスが必要です。
3.ネットワーク層
複数のメディアを跨って遠く離れた二者間の通信を行えるようにするための階層です。この階層でユニークなアドレスが必要です。
4.トランスポート層
通信路の信頼性を確保するための階層です。例えば、電話で話をしている際、聞き逃したからもう一度、もしくは続きはメールで、というようなやり取りを行って信頼性を上げます。この階層までが合っていれば正確な情報伝達はできると考えられます。
5.セッション層
対話の同期を取る階層です。
A:おはよう
B:おはよう
・・・
A:さようなら
B:さようなら
というような会話の一連のひとかたまりの決まりごとです。この階層から上は1つのコンピュータ内のソフトウェア間の決め事です。TCP/IPプロトコルではセッション層を含む上3つの階層はひとかたまりで区別がありません。
6.プレゼンテーション層
データの表現方法を合わせる階層です。文字コードにはいろいろ種類があることをご存知でしょうか。画像フォーマットにもいろいろありますね。これを規定します。
7.アプリケーション層
人が直接操作し、目に触れる階層です。Webブラウザとメールクライアントでは直接会話できませんがこれを合わせる、ということです。
以上、非常に大雑把な説明でしたが、直感的なイメージが頭にあれば、正確な技術書の理解も進むと思います。