2018.4.26
前回は内蔵キャパシタをフル充電した後放置して、heart beat発信が何回できるか、それによって一回あたりの消費電力量を算出しました。
今回は、STM429Jにリチウム1次電池CR1220を接続して、リードスイッチ(マグネットスイッチ。ドア開閉を検出するスイッチ)による無線発信が何回できるかを数えてみました。
実験方法
・STM429Jに、リチウム一次電池CR1220を接続します。
・リードスイッチを外部からON/OFFするために、ソレノイド(電磁石)を500ms毎にON/OFFする治具を製作しました(500ms経ったらON、500ms経ったらOFF、を延々と繰り返す)。STM429Jをリードスイッチのそばに置いてソレノイドをONするとドアが閉まり、OFFするとドアが開いたことになります。
・無線発信をログする装置は前回と同じ。
実験結果
トータルで1699700回の発信を検知しました。CR1220両端電圧は実験開始前3.32V、実験終了時2.31Vでした(逆流防止用ダイオードの降下電圧があるためVOFF(typ)=1.9Vよりも高いところで終わっています)。
※実際にはもう少し行けそうでしたが、時間がかかりすぎるため中断しました。
※リードスイッチの状態変化に500ms毎に追従できなくなるまで(500ms毎の無線発信をしなくなる。発信が途切れ途切れになる=キャパシタへの充電時間がかかる)だと、1579077回でした。
考察
・CR1220の容量は公称35mAh(出力が平均3Vなら378J)なので、一回あたり222uJという計算ができます。もちろん電池の容量全てを使い切っていないことと、500ms毎の発信であることを考慮しなくてはなりません。(開閉頻度が低い場合はスリープ時の電力消費があるので、発信一回あたりで計算すると消費電力は増える方向)。
・500ms毎の発信ができなくなる(リードスイッチの状態変化に追従できず発信が途切れ途切れになる)までで計算すると、一回あたり239uJとなります。
・仮に、トイレの個室の、未使用時は開いているタイプのドアに設置し、一日200人が使用するとすると(開いている→閉じる、閉じている→開く、で二回、つまりトイレに入って出たら2回とカウントする)、200人 x 2回 x 365 = 146000なのでCR1220が一個で160万回発信できれば11年は持つ勘定になるが、実際には上記のようにスリープ時の電力消費、heart beat発信、電池諸々の漏洩電流、電池自体の劣化、等々により寿命はこれより短くなる方向である。
・ある特定の電池での寿命を予測するには、(1)その電池がVOFFになるまでにどの程度の電力供給が可能か、(2)無線発信していないスリープ時の消費電力、(3)無線発信一回の消費電力、を計測して、実用時に当てはめるとより精度の高い寿命予測ができると考えられます。