二番を目指すことは有り得ない

数年前、民主党政権時代に政府予算のムダを洗い出す「事業仕分け」がありました。中でも私が注目していたのが「国産スーパーコンピュータの開発」でした。若かりし頃スーパーコンピュータ(以下、スパコンと略す)の開発に少し関わったことがあるからということもありますが、古巣の企業が新規開発を凍結したり、一時期世界一を誇った国産機が2009年11月現在31位という事態に日本の国力が衰退していくことを憂慮していました。その後予算がついて理化学研究所の京が一時期トップになり、最近はちょっと下げたにせよ世界4位に入っているようです。ただこのままずるずるランキングを下げていくと中長期的には日本の科学技術に確実に影響を与えます。新薬や新材料の開発によその国のスパコン使わせて、とお願いしても後回しにされたり、断られたりしたらおしまいですから。

テレビ中継された事業仕分け作業のなかで、元タレントの女性議員が「一位でなきゃだめなんですか?二位ではだめなんですか?」という質問をしていたのが印象的でした。科学技術と言うものがわからない一般人・素人はこんなものかもしれませんが、こういう人々に国家の行く末を決められたらたまらない、という思いも持ちました。

科学技術と言うものは二位を目指すことはありません。エリシャ・グレイという人を知っている人はほとんどいないと思いますが、グラハム・ベルの2時間後に電話の特許申請をした人です。発見や発明は一位でないと価値がないのです。「スパコンで世界2位を目指します」と言った瞬間に「日本は二流国になります」と宣言するようなものなのです。

モノ作りも同じようなことが言えます。世界のどこかで自分たちの作っているものより価格や性能で優れたものが作れるなら我々に仕事は来なくなるからです。日本が製造業を生業として生き残っていくためにはどんなにミクロなことでもいいので世界一を目指さねばなりません。そのためにまずは「世界一になれる種」を見極める必要があります。更に言うならそういう「事業仕分け」ができるほどに金銭的にも能力的にも余裕を持つことです。まさに今が正念場です。

 

 

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